「訪問着」と「付け下げ」は、どこが違うの?
留袖は裾模様だけ、小紋は全体、とパッと見るだけで判断できるけど、訪問着と付け下げは同じ位置(裾・胸・袖)に模様が入っているから、違いがわからない。
仮絵羽で販売、絵羽模様、共八掛が訪問着と言われていますが、それで判断していいの?
「訪問着」と「付け下げ」のベストな見かけ方で判断すると、それぞれの着用シーンがわかりやすくなります。
「訪問着」と「付け下げ」の見分け方
簡単に言ってしまえば
豪華なら訪問着、控えめなら付け下げ です。
えー!そんな感覚でいいの?と思われるでしょうが、いいんです。
判断方法はいろいろありますが、全てに当てはまる基準がないので、客観的に見て豪華か、控えめか、その印象で訪問着か付け下げを判断するしかありません。
よく言われる訪問着と付け下げの違い
訪問着 | 付け下げ | |
販売時の状態 | 仮絵羽 | 反物 |
縫い目の模様 | つながっている | つながっていない |
共八掛 | 付いている | 付いていない |
上記のことが訪問着と付け下げの違いと言われていますが、これに当てはまらないものがあり、仕立て上がると判断できないものがあります。
訪問着は仮絵羽・付け下げは反物
訪問着は、着物の形に仮縫いをした仮絵羽状態で、付け下げは反物の状態で販売されています。
これ、仕立て上がったらわかりませんよね。
仮絵羽で販売された大人しい色柄の訪問着は、仕立て上がったときに訪問着に見えるでしょうか?
販売されていたときに仮絵羽だったか反物だったか、呉服屋さんから訪問着と説明されたか、付け下げと言われたかは忘れてしまいましょう。
だって、仕立て上がった着物には、そんなことは関係ないです。
訪問着は絵羽模様・付け下げは飛び柄
訪問着は縫い目で模様がつながった「絵羽模様」、付け下げは模様がつながっていない「飛び柄」
これもよく言われる訪問着と付け下げの違いですが、間違ってはいないけど正解ではないです。
訪問着は、白生地を着物の形に仮縫いしたものに模様を付けていくので、裾を広げると1枚の絵のようにつながっていて豪華な印象になります。
付け下げは、反物に柄付けをするので、縫い目で模様がつながらない。とされていますが、縫い目で柄がつながっている付け下げはたくさんあります。
以前、呉服屋さんで見せてもらった付け下げが縫い目で模様がつながっているのに「飛び柄」と説明されたので「ここ柄つながっていますけど、飛び柄なんですか?」と聞いたところ、ものすごくビックリされて、柄はつながっているけど、小さいものはつながってるうち入らないと言われました。
えー!そんな勝手な解釈あり!?小さいってどの大きさまで?と思ったことがあります(笑)
裾模様だけでなく「胸から衿につながる模様があれば訪問着」とも言われますが、上半身の柄はつながっていない訪問着もあれば、胸と衿の柄がつながった付け下げもあるんです。
このような着物を「付け下げ訪問着」と呼んでいる呉服屋さんもあります。
いやもう、やめてと言いたくなります。
訪問着と付け下げだけでもわからないのに、付け下げ訪問着なんて・・・ねぇ。
このように、判断基準が全てに当てはまるものじゃないことが、混乱を招くのです。
訪問着には共八掛が付いている
訪問着には共八掛が付いてるけど、付け下げには付いていない。
共八卦とは、表と同じ生地で染められた八掛(裾回し)のことで、訪問着には共八掛がついている場合が多いです。留袖は表地と同じ生地ですが、訪問着は表地と同じとは限りません。
しかし、共八卦のない仮絵羽で販売されている着物、共八卦が付いた反物で販売されている着物もあるので、共八卦のあるなしで決められないのです。
「訪問着」と「付け下げ」の違いには、例外が多い
ネットや本に載ってる「訪問着と付け下げの違い」は間違いではないけど、例外があるのでそれだけ判断できるものではないのです。
全てに当てはまる基準がありません。
「訪問着」と「付け下げ」の見分け方 まとめ
「付け下げ」は、戦時中に豪華な訪問着に代わる控えめな着物としてできたものです。
訪問着=豪華 付け下げ=控えめ
これを基準に、どのような形で販売されていたとか、共八掛のあるなしに関係なく
「仕立て上がった状態で、どう見えるか」で、判断したら着用シーンを間違えることはありません。
訪問着として販売されていたものは訪問着、付け下げは付け下げと言われる方もいますが、付け下げに見える訪問着は訪問着でしょうか?
訪問着が相応しい席に付け下げに見える訪問着を着て行ったら、あれ?と思われる可能性があります。
いろいろな意見があると思いますが
「訪問着」と「付け下げ」は、見た目の印象で判断しましょう。
「華やかで豪華なフォーマル」なのか「しっとり控えめなフォーマル」なのかで判断すると、着用シーンで迷うことがなくなります。
もちろん、着物の生地や模様、手法なども関係ありますが、どう見えるかで判断するのがベストです。